山田方谷の思想と藩政改革
樋口 公啓
明徳出版社
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山田方谷の思想と藩政改革」樋口公啓著 をようやく読み終えた、思いの外時間がかかってしまた。



この「山田方谷の思想と藩政改革」の著者、樋口公啓氏は東京海上の元社長であり、経団連の副会長という、経済界に大変影響力のある方で、このような氏が山田方谷の本を書かれるという事は大変意義深い、本書の帯には報告研究でも知られる全日空会長の大橋洋治の推薦の言葉として「方谷は「天下に求めて足らざれば、古人に求めよ」と、河井継之助に教えた。日本を代表する大企業のトップを務め、財界の重鎮でもある樋口公啓氏が、歴史を学び、報告研究を志したのも、まさに混迷する現在の道標を知るためだったのだろう。本書には方谷の中国歴史講義を採りあげた論考等が収められ、方谷研究に新たな展望を与えるに違いない」とうたっている。



と、内容にはいる前に気がついたのだが、この本明徳出版社から発行されているが、その表紙の紙質や紙の色、文字のフォントなどが、同じ明徳出版発行の「炎の陽明学。矢吹邦彦著」「ケインズに先駆けた日本人・矢吹邦彦著」とほぼ同じイメージにまとめられている、本書二も書かれているが、樋口氏が山田方谷の研究を始めるきっかけとなった本が、この炎の陽明学である事から、「炎の陽明学」へのオマージュとして、このデザインを採用されたのであろうか、なんにしても、この3冊を並べていると、3部作の様で収まりがいい。



さて内容だが、この本は樋口氏の8年間に渡る方谷研究の集大成と言えるもので、その内容は論文である。

論文であることから、出典先などの情報が極めて細かく記述されており、方谷研究における索引としても非常に価値がある、ただし、冒頭読むのにとても時間がかかったといったとおり、内容は相当に専門的で、漢字仮名交じり文も大量に引用されていることから読解するににはそれなりに読み込まなければ、頭の中で飛んでしまう、それくらい専門的だ。



よって、はじめて山田方谷に触れようとする人にはこの本は向かないだろう、方谷に関してある程度、知識を得てさらに、深く研究したいという方にはうってつけの書籍だと思う、たとえば、大学の論文として山田方谷を研究し論文を書く必要があれば、この本はなくてはならない存在となるだろう。



さて、具体的なないようだが、本書は3部構成となっていつが、その1部目はさらに2章にわかれている、1部の一章目では方谷の藩政改革について、非常に細かく検証している、僕が知っている方谷本のなかで、ここまで改革の中身とその意義を細かく解説した本はなかったのではないか、流石経済界のトップとして長年スキルを磨いてきた方であり、その分析の切れ味は他の本を大きく上回る。



2章目は方谷の思想について掘り下げている、方谷はどのような思想で反省改革を行ったのか、その中で展開される論は陽明学、朱子学、そして仏教(禅)がどのように方谷に影響を与えて行ったのか、ただしこの部分もそれなりに専門的であるため、ある程度陽明学や孟子についての知識が要求される。



第2部は大塩中斎と山田方谷について、思想や行動を比較した論文である。ここでは大塩についてもかなりくわしく記述されている。

僕はこれを読んで大塩中斎のことを始めて多く知った、二人の親近性と異同については本書を。



第三部も方谷の思想についてであるが、こちらは続資治通鑑鋼目講説(※続資治通鑑鋼目は方谷が有終館学頭時代使用していた教科書のようなものです)で残る方谷の講義の内容をもとに思想を掘り下げている。