小説 山田方谷の夢

タイトルからもわかるとおり、方谷先生の顕彰本ではなく「小説」である。

この本は小説であるため、今まで山田方谷について知ろうとしても「分厚くて難しそうな本が多い」といって二の足を踏んでいた方にもするりと入ってくるのでは無いかと思う。

小説の為、多少の創作やあえて深く説明していない部分もあるが、そこに関しては、まずこの小説を読んで「山田方谷」について興味を持ってもらい、その後さらに詳しく調べて見るのもいいのではないだろうか。

しかし山田方谷の生涯というのは、改めて読んでみてもやはりすごい、”激動”という言葉がふさわしいともう。また、この小説ではここ数年の調査でわかった新事実や、他ではあまり触れられていなかった歴史的重要人物との交流もつぶさに書かれ方谷の生涯を彩る。

また、この小説には方谷の他、もう一人の主人公として「谷昌武」が登場する。谷昌武とは備中松山藩の藩士で、知る人ぞ知る新選組七番組組長・谷三十郎の弟で近藤勇の養子”近藤周平”その人である。

山田方谷・備中松山の歴史は「敗軍」の歴史である。
日本の歴史、特に幕末史を見るとき、そのほとんどは「官軍(西軍)」の視線で描かれている。この歴史の視点にそろそろ敗軍の視点も加える時期が来ていると思う。

山田方谷という人物は、何度も何度も”絶望的”な思いを繰り返し、それでもなお己を信じ、「義」の為に、藩民の為に、全力で「絶望」と戦い、そして絶望の先にも必ず道は続いていると言うことを実践してきた。

今、”日本の経済的危機”にくわえ”東日本大震災””原発事故”という未曾有の危機が日本を覆う、一方政治は混迷し、解決策は全く見いだされていない。

いま、こんな時だからこそ、「山田方谷」と言う人物が存在し、様々な絶望と戦い、そして克服してきたという歴史を知ることは、今後の日本にとって大きな意義があるとおもう。