公私にわたり忙しい方谷の元にある若者が訪ねてきた。このころの方谷の名は藩政改革の成功者として日本中に知れ渡っていた。このため方谷の元には連日入門希望者が殺到していたが、超多忙の方谷は全国からやってきた彼らの入門願いを次々と断っていた。

塩谷桐蔭の紹介状を持つその若者は書生と言うには少々老けた顔立ちの青年でぎらぎらした目をしている。「いま、弟子はとっていない」と門前払いしようとする方谷に、若者はこういった。
「私は先生に学問を教えていただこうとは思っていません。先生の日々の生き様を見せていただくことで、生きたナマの改革を体感学習死体のです。」
おもしろい、方谷は内心そう思ったが、すぐには入門許可を出さなかった。
この男、どんな奴か見極めてやろう—