方谷は頭を抱えていた。「金が足りない–」
方谷はかねて進めていた兵士の屯田制を自らにも課すべく、城下から遙かに離れた川沿いの地「長瀬」に住居を構えることにした。
そして、いざ母屋を建てるさい、今後やってくるかもしてない塾生らのため、必要以上の大きな屋敷をたててしまった。

しかし、困ったことに住宅の普請費が足りなくなって建設が途中で滞ってしまった。
「参った—」
そんなことで頭を痛めている途中、今度は台風が方谷一家に襲いかかる。
大雨と大風は三日三晩荒れ狂い、ついには長瀬宅の食料もつきてしまった、良くできた妻のはずのみどりもついには「松山に帰りたい–」と漏らす始末。
八方ふさがりの方谷に救いの手をさしのべたのは—