方谷には懸案があった。それはこの方谷改革の最大の難所でもあり、どうしても避けては通れない「藩札改革」である。
松山藩の藩札はそれまでの通貨失政と度重なる偽札の出現で全く価値を失っていた。
「藩札を立て直せなければ改革成功はあり得ない」
その夜、方谷は新見上市天領の庄屋であり門下生である矢吹久次郎の宅を隠密に訪ねた。
「矢吹君、実は折り入って頼みがある、君にとっても悪くない話だ—」

数日後、藩士、民百姓すべてが腰を抜かすほど驚いた発表が方谷から出された。
「これから2年間の期間に限り、藩発行の5匁札すべてを正価と引き替える」
今まで紙切れ同然で捨てても惜しげもなかった藩札を正価と交換するというのだ!当然藩民達はあわてふためいた。