江戸の勝静より方谷に呼び出しがあった。すでに隠居を迎える年となっていた方谷は、この機会に隠居の許しを請おうと江戸にいる藩主勝静の元に向かう。江戸藩邸で深々と頭を下げ隠居を願い出た方谷だったが、勝静から発せられた言葉は方谷にとってあまりにも意外な物だった。

「安五郎、そちに元締役及び吟味役への就任を命ずる」

この青天の霹靂ともいえる沙汰を受けた方谷はひたすら辞退する、しかし勝静も一歩も引かない。実はこのとき方谷にはもう一つ気がかりなことがあった。方谷が江戸に赴く前から弟平人の体調が思わしくない、診断結果は肺病だった。方谷は混乱しながらも江戸でよく聞くと言われている薬を買い弟にことづける。その後、方谷は元締め役を引き受けるという決断をし、急いで松山に帰る。しかし方谷が松山に着いたとき、16才の弟はすでにこの世を去ったあとだった。